ひとり親支援30年で見えてきたこと
2026年08月30日
私は、1997年12月にインターネット上で「母子家庭共和国」というシングルマザーのための情報サイトを始めました。
きっかけは、私自身が離婚を経験し、シングルマザーになったことでした。
当時は今のように、スマートフォンもSNSもありません。
インターネットで「母子家庭」と検索しても、欲しい情報はほとんど出てきませんでした。
「離婚したら、これからどうやって生活すればいいんだろう」
「子どものことはどうしたらいい?」
「養育費がもらえない、どうしたらいいの?」
「同じ立場の人は、どうしているんだろう?」
わからないことだらけでした。
だったら、自分で情報を集めて、みんなで共有できる場所を作ろう。
それが「母子家庭共和国」の始まりです。
当時の私は、今ほど「支援」という言葉を意識していたわけではありません。
ただ仲間が欲しかった。
それだけだったと思います。
でも、活動を続けているうちに、どんどん相談が届くようになりました。
離婚したいけれど、何から始めればいいかわからない。
養育費を払ってもらえない。
子どもを育てながら働くのが大変。
元夫との関係に悩んでいる。
これで本当に良かったのだろうか?と悩んでいる。
私は、たくさんの当事者の声を聞きました。
そして気がついたんです。
ひとり親の問題は、「お金」の問題だけではない。
もちろん経済的な問題は大きいのですが、それだけではありません。
孤独。
子育ての不安。
元配偶者との関係。
子どもの気持ち。
仕事との両立。
「これから自分はどう生きていけばいいんだろう」という人生そのものの問題です。
だから、情報を提供するだけでは足りない。
「こうしたらいいですよ」とアドバイスするだけでも足りない。
その人自身が、自分の人生を考えて、自分で答えを出せるようになることが大切なんだと思うようになりました。
NPO法人Winkを立ち上げた理由
2002年、私はシングルマザーを支援するNPO法人Winkを設立しました。
活動の幅を広げ、相談やカウンセリング、情報提供、セミナーなど、ひとり親家庭をさまざまな角度から支援していきました。
その中で、私が特にこだわってきたテーマの一つが「養育費」です。
私はずっと、
養育費は「子どものための権利」
だと言ってきました。
離婚しても、子どもの親であることは変わりません。
一緒に暮らしていない親にも、子どもを育てる責任がある。
これは、とてもシンプルな話です。
それなのに日本の養育費の支払い率は当時は2割にも満たない現状でした。
(現在でも3割程度なのでそれほど変わっていませんが…)
「払ってもらえないなら仕方がない」
「離婚したんだから自分で育てるしかない」
そんなふうに、母親側が諦めてしまうことも少なくありません。
でも、それでは子どもの権利が守られません。
だから私は、養育費について社会にもっと知ってもらいたいと思い、啓発活動を続けてきました。
「養育費の日(4月19日)」を作ったのも、その一つです。
30年近くたった今でも、私はこの問題が解決したとは思っていません。
むしろ、まだまだ社会全体で考えていかなければならない問題だと思っています。
児童扶養手当の問題にも声を上げた
ひとり親家庭への支援について活動していると、当然、制度そのものにも目が向くようになります。
児童扶養手当についても、制度改正の際に当事者の立場から声を上げてきました。
私は「ひとり親はもっと働けばいい」と単純に言うことには違和感があります。
もちろん、仕事を持って経済的に自立することは大切です。
しかし、
子どもを育てながら働く。
子どもが病気になったら仕事を休む。
学校行事にも対応する。
保育や学童の時間に合わせる。
そして、十分な収入を得る。
これを一人でやるのは、簡単なことではありません。
「自立してください」と言うだけでは、自立支援にはならないのです。
自立できる環境を社会が作ることが必要です。
ひとり親支援は、生活支援だけでは終わらない
今は、ひとり親家庭への制度や支援情報も、私が活動を始めた頃とは比べものにならないほど増えました。
それは大きな進歩です。
でも、制度が増えたから問題がなくなったわけではありません。
支援制度を知らない人。
知っていても、どこに相談したらいいかわからない人。
相談すること自体をためらってしまう人。
養育費のことで元配偶者と揉めている人。
子どもが親の離婚に傷ついている人。
さらには子連れ再婚も増えています。
再婚したけれど、ステップファミリーの難しさに直面している人。
私は、ひとり親支援を「お金を給付すること」だけで終わらせてはいけないと思っています。
もちろん経済的支援は必要です。
でも、それと同時に、
自分の人生を自分で選べるようになるための支援
が必要です。
30年近く活動して、今の私が思うこと
振り返ると、私自身が様々な経験をしてきました。
結婚もしました。
離婚もしました。
再婚もしました。
子どもを育ててきました。
さらにカウンセラーとして、たくさんの人の人生を見てきました。
その中で、私が今一番伝えたいのは、
人生は、いつからでも選び直せる
ということです。
離婚したから人生が終わるわけじゃない。
ひとり親になったから不幸になるわけでもない。
再婚したから必ず幸せになるわけでもない。
大切なのは、
「私はどう生きたいのか」
を自分で考えること。
そして、そのための方法を身につけることです。
だから私は今、夫婦関係や再婚、ステップファミリーの問題だけでなく、ひとり親家庭の支援についても、ずっと発信を続けています。
私が「母子家庭共和国」を始めた1997年から、もう30年近くになります。
あの頃は、インターネットに情報を置くことから始めました。
今は、カウンセリングをしたり、講演をしたり、本を書いたり、SNSやWebサイトで発信したり。
方法は変わりました。
でも、やりたいことは変わっていません。
「一人で抱えなくていいよ」
と伝えること。
「あなたの人生は、あなたが選んでいいんだよ」
と伝えること。
これが、私が30年近くひとり親支援を続けてきて、今でも大切にしていることです。
